SSブログ

齋藤先生、さようなら [つれづれ《哀》]

嫌な一件も、カラオケですっきりした翌日曜日。
1本の電話に私は膝から力が抜けた。


それは、
娘が丸三年お世話になっていたピアノの先生の訃報だった。
去年のピアノの発表会で、直前に腕を折った私の代わりに娘と連弾してくださった先生である。

今年の4月、検査入院でレッスンを1ヶ月お休みされると聞いたとき、
「かなりお悪いところでもあるのだろうか」と
思っていた。

ところが5月になっても先生はまだ退院されず、
さらに長引きそうなので、と代わりの先生がいらっしゃった。

でもまさか、亡くなるなんて夢にも思わなかったのだ。
先生はまだ40代半ばだし、
いつもにこにこと明るく、優しく、
下のお子さんは娘と同い年。
3月までいつもと同じようにレッスンしてくださっていたのに。

私はしばらく涙が止まらず、娘もそばで私の背をなでながら呆然としていた。



週が明けて、娘とお通夜に向かった。
先生はクリスチャンやったんやな、と思いながら、娘と手をつなぎ、
先生がいる部屋に向かう。

棺を見たとたん、まるで蛇口をひねったように涙がどうどうと流れた。

私の記憶にある先生のお顔ではなく、ずいぶんやつれて見えた。
それでもきれいな死に化粧を施された先生は、
口元が何かを語りだしそうにほんの少し開いていた。


嗚咽が止まらず、娘に
「先生に今までありがとうございました。と言ってお別れしなさい。」
となかなか言えなくて、やはりここでも娘は私の背をなでていた。


帰宅すると娘は、ピアノの教本を1ページずつ眺めていた。
そこには、
先生が書かれた細かい指示や励ましの言葉がたくさん記されている。

今年も7月の発表会に向けて、年明けから先生が用意してくださった課題曲がある。
「先生が最後にあんたに選んでくれた曲やから、しっかり仕上げるんやで。」と言うと、
「先生見ててくれるかな?」と娘。

「そらそうや。明日先生は天国に行くけど、発表会にはちゃあんと会場に来られるで。」
「がんばる・・・」と一言だけ娘は答えた。


先生、お世話になりました。
天国でピアノをたくさん弾いてくださいね。









nice!(0)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 8

Sho

お嬢ちゃんは、本当によい先生と巡り会われたのだと思います。
なんであんなにいい人が・・、と思うことが多く、残念です。

by Sho (2008-06-14 18:41) 

蓮花

いい人ほど早く亡くなるんですよね・・・。
3年は短いようだけど、お会いできて本当によかったと思います。
by 蓮花 (2008-06-15 07:08) 

フロレスタン

蓮花さん親子がその先生のことを忘れない限り、先生の魂は生きています。

2人で、先生の人生の楽譜の最終小節の二重線の前(第2間と第3間)に、縦に点を2つ付けてください。そうすれば終わりにならずに、リピートで最初に戻ります。先生の教えを忘れなければ、ピアノもその先生の魂をこの世にいつでも呼び戻してくれますね。


by フロレスタン (2008-06-15 15:24) 

圭

フのつくお兄さま、すてきなコメント!
さすがでございます。

by 圭 (2008-06-15 22:04) 

ken

作家は死して作品を遺す、と言います。
お嬢さんが齋藤先生の作品だといいですね。
ご冥福をお祈りします。
by ken (2008-06-16 00:25) 

蓮花

フロレスタンさん、ありがとうございます。
さっそくリピートを薄く入れました。発表会が終わったら、もう一度はっきりと書き入れます。
娘にも忘れて欲しくないと思います。
by 蓮花 (2008-06-16 07:26) 

蓮花

圭さん、なにもわざわざ「フのつくお兄さま」と書かんとも
真上に・・・(笑)。


by 蓮花 (2008-06-16 07:29) 

蓮花

kenさん、やはり先生の教えは娘の中にしっかり残っていると思います。
作品ってほどりっぱじゃなくても、これからもピアノは続けていくと
思います。
by 蓮花 (2008-06-16 07:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

大声で歌うそれを言うなら ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。